カルカッシギター教則本 Op.59 序文(翻訳)

 この教本を作成するにあたって、科学的な作品を書こうなどという意図はなかった。ただ、ギターの学習をより簡単にしたかったのだった。わたしが取った方針は、もっとも明確で、もっとも単純で、そしてもっとも正確なやりかたで、この楽器の全資源の完全な知識があたえられる、そういうものであった。

 芸術家たちや著名な愛好家たちから喜ばしい反応が、親切にも今日まで私の作品に寄せられてきた。それで私はこの本を出版しようと決めたのだった。

 教師としてのキャリアの中で得た長い経験は、私に有益な視点を提供したが、私はそれを書きしるしておくことが自分の責務であると、そう考えた。各レッスンが漸次的にすすむように、細心の注意をはらった。楽器をまったくわからない生徒が、ただ落胆させるだけの無味乾燥な難題に出くわすことなく、はじめの練習曲から終わりのものまで演奏できるようにしたのだった。

 左手の運指は相当な量の展開を取りあつかったが、それとはべつに、右手のメカニズムは、安全かつ華々しい演奏を獲得するためには、絶対不可欠なもののひとつであるように私にはおもえた。

 私は第二部まで、この手の運指を示した。「ポジションの項目」の時点で、生徒は自分で運指づけをするのに、十分な知識を習得しているだろう。

 第三部は気晴らしにすぎないが、しかし無益だということはない。異なる特徴をもった曲をふくみ、漸次的になるよう分類している。

 私は自分の生徒にもちいてきたことから、きっぱりといえる。つまり、知性のある人間ならばだれであれ、最初から最後まで注意ぶかくこのメソッドを学べば、ギターのメカニズムの完璧な知識を獲得するだろうということである。

もし役にたつ作品をつくったと確信できるならば、自分の仕事にたいして報われる価値があると私は信じるだろう。

マテオ・カルカッシ

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